2018年1月28日日曜日

張本が水谷を、伊藤が石川を撃破した、その卓球の先進性とはなにか


張本のプレイは卓球の新たな次元のオープニングとなった



今年度の全日本卓球選手権のシングルスは、男子は14歳の張本、女子は17歳の伊藤が制覇した。

十代の中学生と高校生である。ぼくはこのふたりの優勝を格段驚かない。なぜなら、その力量はこれまで日本の卓球界を牽引していた水谷と石川をすでに凌駕していたからだ。だから、十代の彼らが優勝しても何のふしぎもなかった。事実、今回の優勝者は彼らであることを予想してツイッターに発表していた。



では、この十代のふたりのどこが優れて、水谷と石川を凌駕しているのか?



まず張本だ。端的に張本と水谷の力量の相違は「つなぎ」と「強打」の違いだ。水谷がつなぐケースで張本は強打できる、ということである。



水谷はボールを持つ技術、「つなぎ」に優れたプレイヤーだと見られていた。そのつなぎ技術はミスが少なく、かつ相手に決定打を許さないボールコントロールを有している。また、あのロビングなど、相手攻撃にも耐える守備力も群を抜いていただろう。



だが、この水谷のつなぎ技術は張本の前では、まったく通用しなかった。張本は、水谷がつなぐとそれをライジング強打や前陣強ドライブ一発で抜いた。水谷のストロングポイントが張本にかかっては恰好の餌食になったのだ。



ぼくは水谷のつなぐ卓球や、すぐに下がったり、安易にロビングすることは、彼の成長によくないと思っていた。そんな水谷も最近では、以前よりはロビングも少なくなったし、前で攻めるようになったけど、それでもあの「つなぎ」が彼のもう一段の成長を止めていた。



さて、水谷は昨年の世界選手権で張本に敗れている。だから今回水谷は、張本対策をとうぜん考えたはずだ。対策するのは、まずサービス。それと攻撃的プレーに徹するという二点だろうと見ていた。

そして全日本決勝。ゲームが開始されると、あきらかに水谷は前に陣取り積極的に攻撃に打って出た。先に攻めようという意志は十分にうかがえた。



だが水谷が、どうしても攻められないボールをつなぐと、ことごとく張本の強攻にしてやられた。張本のバックにつなげば、猛スピードで水谷のフォアサイドを切るバックハンドで、フォアに振れば、その強ドライブでクロスとストレートの左右に打ち分けられた。苦し紛れにロビングをあげれば1、2本でぶち抜かれた。



そう、張本の強打、強ドライブを水谷は止めることができないのだ。彼の得意な「つなぎ」で「しのぐ」ことができない。



オリンピック・シングルスの銅メダリストであり、全日本チャンピオンの水谷だが、張本と対戦したとき、水谷の打球が「甘く」見えた。水谷が「ふつうにつなぐ」ボールが、イージーな打球に見えた。いや、水谷が甘く、イージーなのではない。そう見えさせる張本の力量が凄いのだ。

おそらく、日本はもちろん世界の卓球は、今後、張本の卓球が基準となるだろう。



それは相手に時間を簡単に与えない卓球といってもいい。もちろん、それは自分がプレーするのに必要な時間も少なくなることを意味している。



張本の技術は世界最高クラスだが、難しい卓球をしているわけではない。高レベルだが、とてもシンプルな卓球をしている。自分のタイミングがとれれば、強打、強ドライブするだけである。



そのスイングフォームも実にシンプルだ。たとえば台上強打。フォアハンドフリックというやつだが、短く低く飛んでくる台上のボールにたいして、その頂点をラケット面をほぼ垂直にしてテイクバックをとらず、肘を支点に水平軌道でコンパクトに振りぬく。別段、複雑な技術ではない。ポイントは台上でバウンドしたボールの頂点を逃さず、ボールの側面を叩くだけだ。



どんな低いボールでも、バウンドするときその頂点はほとんどがネットの高さを越える。ネットの越えた高さのボールは、直線軌道を描く強打をしても高さ的に「入る」のだ。



さて、張本は中国卓球に通じるだろうか? 



それはもう十分だろう。たぶん、今年か来年中には、中国のトップ選手を破るはずだ。中国選手の回転量豊富な前中陣からのパワードライブ対張本の前陣ライジング強打・強打ドライブのすさまじいラリーが展開されるにちがいない。

だが、時間の問題だ。張本が勝つのは。なぜなら、張本卓球は現中国卓球よりもそのプレースタイルが先進的だからだ。また、そういうプレーができる資質にも張本は恵まれている。



だが、中国を侮ってはいけない。こと、中国の卓球に関する慧眼は恐るべきものがある。

中国は張本タイプの卓球プレイヤーを近い将来、きっと輩出してくるだろう。なぜなら、このままでは中国は張本に勝てないと予測し、張本卓球が今後の世界卓球の最強スタイルであることを読み切っているだろうから。

そんな中国と張本が決戦の場で対決するシーンは、卓球の新たな次元のオープニングを告げるだろう。



※女子卓球、伊藤美誠については後日、掲載します。

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